LUMINOX Series 3000/3900 竜頭の不具合

2020.4.18お預かりのLUMINOX Series 3000/3900 竜頭の不具合修復のご依頼です。

遊び革の状態もチェックします。ウレタン・バンドは綺麗な状態。

裏蓋は4本ネジで留まっていて裏蓋記載。

この竜頭が引けません。錆びているのか、グリス切れなのか?外してみなければわかりません。

裏蓋の裏側もチェックして。

パッキンを外して劣化具合をチェックしますが異常は無し。

これがムーブメントで。

ムーブメント拡大。ムーブメントに錆は無く、ムーブメント内で巻芯が固着という最悪のパターンでは無さそうです。

電池格納部をチェクしますが綺麗な状態。

竜頭を引いてみますがこれが限界。という事はグリス切れですが、抜くためには潤滑油を染みこませて一晩置きます。ところが翌日になっても抜けず。仕方がなくもう一晩置きます。それでも抜けない。兎に角が「抜かないと作業が始まらない」。無理矢理引き抜くと、竜頭パッキンが引きちぎれます。そうなると「竜頭ごとの交換」になりますが、仕方がありません。普通ならここで返却となる状態ですが一か八かです。

な・・・なんと。竜頭パープごと抜けました・・・?これは始めて経験ですが。こんな事が起こり得るのですね・・・。想像するところ。
「竜頭と竜頭パイプの間に湿気が溜まる」それによって竜頭パイプが加水分解で膨らむ。更に湿気が乾燥するときに竜頭パッキンも乾燥、加水分解で接着剤の様に固着。何度か竜頭を引くことで千切れた箇所にストレスが掛かり、疲労をおこしていた。それを私が強引に引いたが為に引きちぎれた。という流れでしょう。
せめて5・6年前に「竜頭が堅い」と感じた時に一度、グリスアップしていれば。という結果ですが普通、時計店で電池交換しても「竜頭を抜いてグリスアップ」までは行いませんから。仕方が無いでしょう。

それにしても見事、根本から引きちぎれました。かなり疲労していたものと思われます。さて、こうなると構造から「竜頭パイプのみ交換」という訳にはいかず。「ケース交換となります」。また、引きちぎれた部分が竜頭内部に残っており。「竜頭交換」も必須。とは言うものの部品の入手は不可ですから。ガラ箱から探し出すことに。このモデル5・6年前までは依頼が多かったのでジャンクを集めていたものがあったハズ?

ただ状態が良い物があったかどうか?この時計ですがガラスも綺麗で、回転ベゼルの数字の黄ばみも無く。数字の凹み部分のエッジも残っており状態は良い。ただ回転ベゼルは回りませんから、回転する事が、ご希望ならケースごとの交換しかない。せめてガラスが外せれば。良いですがこのガラス、接着でも無く、プラスチック・パッキン(圧入)でも無い。ガラスを外せても取付が出来ない構造です。

2時間ほど探して「左」の物を見つけました。ただ数字の黄ばみ、凹み部分のエッジの摩耗は良く使い込んだ感じです。またガラスに1cmほどの目立つスクラッチ傷があります。

竜頭パイプは綺麗ですから、あとはムーブメントを納めるにサイズが合うか?

ジャストサイズ。あまり外装の状態は良く有りませんが、ムーブメントは綺麗ですから使用に問題はありません。

こうやって写真で見たら、変わり映えしないですが。元の時計の状態が良いだけにくすんだ感じがするでしょう。それをお伝えすると、やはり見栄え落ちするする物は避けたいと。
そこでもう1本完動品があった事を思い出し。ガラ箱を探してみます。
それは部品取り用では無く、ブレスも付いており中古でも売れる完動品。

そこでオークション・チェックですが驚いた事に、同モデルで完動品なら13.000円〜18.000円くらいの相場が付いております。驚き!。新品に近ければ30.000〜50.000円。そんなに人気が出ているのか?15.000円で売れそうな時計からケースだけ、部品取りするのもと考えますが。無残な状態でお返しするの悪い気がします。「グリスアップだけで簡単に直ると軽く受けたご依頼」ですが、こうも厄介になっていくとは。

でも考えようによると、他の方のご依頼で、修理の需要があった時に
「竜頭のみ」「ブレスのみ」「ムーブメントのみ」で売ることは出来ます。
これだけ相場上がっているなら、ケースだけ分けてあげても成り立つか。
他を部品でバラ売りも可能かと。ただ何時になったら売れるか?
分からない事でもあり、また手間も掛かる事ではありますが。

完動品を洗浄して見れば、そこそこ綺麗な状態。

裏蓋を洗浄しても綺麗です。というのも。

お預かりの時計の裏蓋ですが洗浄すると、塗装のハガレやにじみが出ました。これは過去にもこのモデル、裏蓋洗浄で黒い塗装が飛んだことが何度もあります。その経験から言えば、私の手持ち分の時計は洗浄しても裏蓋は綺麗な状態を保っており状態が良いのか?はたまた、年代によって仕上げの仕様が違うのか?偽物とか本物の問題か?私には見分けは付きませんが。

ムーブメントの状態も良く全体的にも良い事が分かります。

左上「今回、交換分」。右上「第一候補分」。下「お預かり分」の裏側です。

左上「今回、交換分」。右上「第一候補分」。下「お預かり分」の表側です。

結局は一番、綺麗な状態の物でケース交換、これならガラスのキズも無く。回転ベゼルも回りますし、元のケースを見なければ状態は同じに感じるでしょう。勿論、竜頭のグリスアップもしておきました。今回「竜頭が引けない」だけでお預かりでしたが、ケース交換・竜頭交換・電池交換にまで発展してしまい、トータル10.000円となりました。

 

 

「TAG HEUERのページ」では殆どでパッキン交換が行われておりますが。
TAG HEUERのパッキンが劣化している事が多いのでは無く。
既製品で同サイズのパッキンが入手出来るという理由です。
他の腕時計も電池交換の度に必ずパッキン交換が必要ですが、行っておりません。
残念ながら殆どの電池交換では元のパッキンを再利用となります。
また「竜頭パッキン」の交換も不可ですから防水機能にはご注意ください。

BRANDJAPANCASIOG-SHOCKその他不動修理受付不可