KING Quartz5856-8080 電池交換メンテナンス
2019.5.3お預かりのKING Quartz5856-8080 電池交換メンテナンスです。
この年代のキングは手間が掛かりますから基本料金(電池交換&洗浄3.100円コース)では収まらないとは思いますが作業してみましょう。
竜頭の動きをチェックして。
超薄型のステンレス無垢バンドにスライドバックル。
裏蓋は”はめ込みタイプ”で裏蓋記載。
はめ込みタイプと言ってもワンピース構造。この年代でサビがひどいものは手間が3倍くらい掛かります。
ラグ部には汚れがビッシリですがバネ棒は問題無いでしょう。
ラグ部は問題無く外れました。
このバネ棒は交換することにします。
作業の前に電池を入れて動作確認のため、電池蓋を開けます。
電池格納部をチェクして電池を入れて動作確認。問題なく動きます。
問題は大きな裏蓋ですが、外れません。ロックは外れていても浮き上がらない。ケースとの隙間をみても錆びているようには見えませんが・・・。汚れがビッシリ入り込んでいるのは確実。
ある程度は強引にいかないとこういう症状は克服できませんが
ガラス内側にパッキンが溶けて接着剤の役目をしているのか?
仕方が無く表から開けて文字盤&ムーブを上に抜き出すか?と試みますが無理は出来ても無茶は出来ず諦めます。文字盤&ムーブを取り出せれば丸ごと洗浄して裏蓋を開ける積もりでしたが。
さてどうする?ここからまさか3時間も掛かるとは。
何とか浮かせる事が出来ました。本来はバネのロックを外せば簡単に浮き上がります。
このタイプも数えられないくらいの電池交換を行っておりますが、このパターンは初めて。
これが取り出した液晶&ムーブメント。
この黒いパッキンが溶けているか?と思いましたがそうでもなく汚れが固着していたのが原因の様です。
竜頭の裏側は洗浄でここまでは綺麗に。サビも無く非常に状態が良いです。
竜頭パイプも、ここまでは綺麗になって。
巻芯の状態も綺麗です。
これがムーブメントで。
ムーブメントにも湿気の痕跡やサビは無く。
ケースの内側もチェックしますが綺麗です。
パッキンを外して劣化具合をチェックしますが異常は無し。
ケースの洗浄は終わってツヤが出ましたね。
何とか開いた状況ですから、そのまま閉めるとまた次回が開かないとおもいますので
今回、洗浄まで出来てラッキーです。
裏蓋側のケースの洗浄は終わってツヤが出ましたね。
ガラスも洗浄して綺麗になりました。
取付出来て胸を撫で下ろします。と言うのもプラスチックのパッキンで留まっておりますが
殆どの確率でパッキンは変形しておりガラスを戻すことが出来ません。
そうなると、もちろん注文という簡単にはいきません。
ツテを頼って探して貰うしか無くなるので納期も数ヶ月に及びます。
ガラスが無事に装着出来たのでパッキンを戻します。
全体的にツヤが出て綺麗になりました。
電池蓋もパッキンにシリコン塗布をして裏蓋に戻します。
ラグ部も洗浄して綺麗になりました。
一番時間が掛かったのがこのブレス。
洗浄→水洗い→エアーで水分を飛ばす訳ですが、その時に黒い汚れがウェスに飛び散ります。
殆どは、その行程を2三回でエアーで吹いても水分が飛ぶだけですが。
今回の場合10回繰り返しても、汚れが飛びます。
仕方が無く洗浄器に一晩、浸け置きします。
翌日も9回、行程を繰り返しやっと黒い汚れが止まりましたがこれも始めて。
これで完璧と思って送ってから、汗をかくと黒い汚れが出て来たとクレームを
受ける事も多く、「断っておくのが無難」なブレスの洗浄でもあります。
本来は伸びチジミはしないブレスですが押し縮めた写真。
左右を引いた写真ですが2ミリくらい伸びるようにまでなっております。
これは伸びたのではなく摩耗です。コマが外せる構造では無いだけに丸ごと何度も根気よく洗浄するしかありません。
かなり外観が綺麗な時計でサビも無い状態ですが、ここまで手間が掛かるとは。無事に動いた事が救いの電池交換メンテナンス完了です。
SEIKOの古いクォーツ時計ですから電池交換で動かない場合は「分解修理」となります。
その場合の費用は10.000円〜30.000円くらいの予算をご用意頂かないと
受付さえ出来ません。
また分解修理して動いたとしても、各所の部品の摩耗もあり
その後10年とかの使用には無理があります。
また問題は電子部品の不具合。これは部品ごとの交換しか対応法がありませんが
もう古い部品ですから存在しません。
存在しても、それは何十年も経過した新品です。
よって分解修理で動いても、
その直後に「電子部品の不具合が出た場合は修理の費用が無駄になる」
そのリスクはご了解頂かないと後悔する事になります。
よって古いクォーツは「電池交換で動けば使える時まで使えばOK」と
割り切って使用される事をお勧めします。
「TAG HEUERのページ」では殆どでパッキン交換が行われておりますが。
TAG HEUERのパッキンが劣化している事が多いのでは無く。
「交換用のパッキンが入手出来る」という事です。
更に普通のOリング形状ですから既製品でも合わせる事が可能。
他の電池交換も必ずパッキン交換が必要ですが、入手出来無い為に交換出来ません。
残念ながら殆どの電池交換では元のパッキンを再利用となります。
また「竜頭パッキン」の交換も不可ですから防水機能にはご注意ください。