新聞記事
日経新聞、以下記事全文(2006.7.21)金曜
「ヤフー どこまで強いか」忍び寄る大企業病「革新性の維持へ腐心」
今春、ヤフーのサイトに怖いシーンのある映画の広告が載ったところ、利用者から「怖い」「子供に見せたくない」という苦情メールが届くという出来事があった。
同社は広告会社にすぐ連絡、次回から紹介す各場面を工夫するといった対策をとるようめた。ヤフーのサイトに載せる記事・画像・広告などの内容を監督する影山工編集長は「利用者の要求が、テレビで言うとNHKのようになってきた。
利用者増で公共性が強まり保守的にならざるをえない」と言う。ヤフーは月に3300万人の利用者を引き寄せ、月間閲覧回数が330億回にのぽるお化けサイト。「公共メディア」のような振る舞いを求められるのも無理はない。ヤフーはサービスやコンテンツの中身に細かな自主基準を設けている。新サービスを立ち上げるには法務部門の審査が必要。新興企業でありながら、安心感や信頼性を重視することで幅広い利用者を吸い寄せてきた。
一方で、新サービスのスタートが遅れがちになる副作用も出てきた。ヤフーに新サービスのアイデアを持ち込んだ企業からは「ヤフーはネット界の「総合電機メーカー」。なかなか新しいことに挑戦しないし、したとしても手続きに時間がかかる」と不満も漏れる。
ヤフーはネット競売では圧倒的なシェテを握るが、買い物ではなかなか楽天に追いつけない。ネット上で物やサービスを売る企業・個人の集まりである全国イーコマース協議会の小島美彦専務理事は「楽天は買い物サイトと競売サイトの利用申し込みが一回で済むのにヤフーは別々。横のつながりはどうなっているんですかねえ」と出店者の声を代弁する。競売と買い物を別の部署が運営する結果、組織の壁が生じ、サービスの使い勝手が悪くなっている。
「(大企業になると革新性を失う)「イノベーションのジレンマをどう克服するかが最大の悩みの一つ」。井上雅博社長は率直に語る。ヤフーは1996年の創業。まだ満十歳だが、年商1700億円超、社員約2500の大企業になった。今も売上高は年率四割超の勢い株主資本利益率(ROE)も40%前後。成長性と収益性を両立させているが、革新性や経営スピードでは大企業病の兆しがみえる。「会社が大きくなると小さい市場巻無視しがち。大きく育つサービスも最初は小さいもの。危険な兆候だ。(井上社長)放置すれば最先端ネット企業というブランドイメージが曇りかねない。
危機感を強めたヤフーは手を打ち始めた。四月にSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を手掛ける「ソーシャルネット」、携帯電話向けサービスを手掛ける「モバイル」など五つの事業部を新設。大部門に埋もれていたサービスを独立組織として切り出し、開発・運営速度を高めることにした。「組戯を小さくし、リーダも若くした。僕ら年寄りは過剰に口を出さない」と井上社長は宣言する。ただ、組織をいじるだけで大企業病を根治できるとは限らない。
昨年ベンチャー企業からヤフーに転職した二十代社員は「後から入社した社員ほど従順で官僚的な傾向がある」と感じている。社員が6000人を超えた米グーグルはとがった人材を求め、今もトップを含む多くの幹部が徹底的に面接を繰り返す。技術者は業務時間の二割を好きな事に費やして良いルールも取り入れている。「根本的な解はない。これからも悩み続けるしかない。」と創業時からヤフーを育ててきた井上社長。新たな成長段階を迎えた”振興大企業”をどう舵取りしていくか。そのやりかたは固まっていない。