スクリューバックの停止位置

スクリューバックの裏蓋の向きが電池交換の前後で変わるのは何故?
というご質問があります。
回答は「パッキンの厚みが変わるから」ですが。
今まで、この質問には「良くあることですが仕方がありません」と
回答してきました。

長年、時計店の営業をしていて店では聞かれた事が無い質問がネット受付では多数あります。
まして私の場合、写真で紹介しておりますので余計に比較しやすいので仕方がありません。
30年店頭に立っていて聞かれた事もない質問・疑問・疑心たくさん言われます。

さて手持ちのTAG HEUERのケースで解説ですが「パッキンが無い状態」でスクリューバックを閉めて縦横に線を引きます。
パッキンがありませんから裏蓋はカチッ!と止まります。むにゅぅ〜とは止まりません。

そこへ手元にあった劣化したパッキンを入れてみるとこうなります。
スクリューバックは右ネジですからパッキンの厚み分右へ回らず1の写真と比べると
マジックの「1」の位置が45°くらい左へずれました。
パッキンの厚み分、右へ回らない為です。

今度は左の写真。新品のパッキンを入れました。
厚みが更に増えた分、停止位置も更に左へずれます。
「右の写真(5.)」は渾身の力で更に締め付けた写真ですが
上の劣化したパッキン(写真3.)よりは左です。

「つまりパッキン交換したら裏蓋の向きは変わります」

ではパッキン交換しなければ変わることは無いか?このパターンなどですが。

パッキン交換してしておりません。なのに向きが変わっております。
この理由は「パッキンの復元」です。
普通の店の電池交換では裏蓋を開けて電池交換して閉めるまで2・3分。
その時間ではパッキンは復元しませんからスクリューバックの停止位置は変わりません。

ところが電池交換メンテナンスではパッキンを外した状態で一昼夜、
置く事も多く、その間に「潰れたパッキンが復元している訳です」。
その復元しないパッキンが「劣化したパッキン」で交換する事になります。

ここまで読んで「では何故、すべて”渾身の力で締めないのか?”」
という疑問も浮かぶと思おりますが。
締め付け過ぎるとパッキンが復元する確率は低くなります。
時計店の人が感じているのはスクリューバックが異常に堅いと
「新人が締めたか?」と思おります。
慣れた方は締めすぎません。(潜水用ウォッチは別ですが)

タイヤのホイルにも「適正トルク」というのがある事と同じです。
(それではその数値は?と聞かれても困りますが)

後、停止位置の変化は「裏蓋ネジのピッチ」によっても変わります。
TAG HEUERなどは小さな幅のねじ切りがされておりますが
LUMINOXは大きいピッチでネジが切ってあります。

以下は余談ですからご興味がある方のみご覧下さい。


あと余談ですが「何故、全ての電池交換でパッキン交換しないのか?」ですが。

サイトトップにも書いておりますが純正部品はありません。
多少劣化していても、やはり「純正が一番合っております」。
それが劣化が激しく「幾ら純正でも劣化した状態よりは既製パッキンの方が安全」
という場合のみ交換します。
(平パッキン・変形パッキンは劣化しても交換が出来ませんが)

また「パッキン交換も宜しくお願いいたします。」というご希望には添えません。
交換は「こちらの判断で劣化した物よりもマシ」という場合のみです。

その理由はCooの腕時計でも解説しておりますが
「腕時計の防水機能は裏蓋だけでは無い」からです。
「裏蓋パッキン交換=防水機能が新品に戻った」となるとクレームの原因になります。
冒頭で「店では聞かれた事が無い質問がネット受付では多数あります。」
と書きましたが。
例えば、これだけの事をお一人のメールに解説して時間を費やしていては仕事になりません。
逆にあまり初歩的な質問が多い方は「お預かりを断っております」。
電池交換メンテナンスはクレームの発生率が高い作業しております。
ご理解が無いと解説(言い訳)に時間を取られ受付が成り立たなくなる為です。

電池交換メンテナンス受付開始から3年はご依頼の数も少なく、対応しておりましたが現在は状況が違おります。
そして4年目くらいからお客様のご理解・ご協力のお陰で解説がゆえに
作業に支障が出ることも極希で助かっておりました。

それが「スマホの爆発的ヒット」の影響で、解説なんて読まないでご依頼してくる方が激増しております。
解説ページをお知らせするにも私が何処に書いたか
忘れるページ数にもなっております(;^_^A。

更に解説書きページを増やす必用に駆られブログを外部からサイト内に移動しましたが。
サイト内への移動。つまり解説(言い訳)は「ブログランキング・アクセス数増加」というキーワードよりも重要なって来た為でもあります。
問題は、その時間が何処まで確保出来るかですか(v_v)


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