簡単そうに見えても

昨日の記事「AGATHA」のお客様から感謝のメールがあり。
非常に喜んで頂き、今回のお預かりは無事に終わりました。

これ、一般の方から見れば「そんな大袈裟な修理?」
そう思われて当然かも知れません。たかがムーブメント交換なら
「時計屋であれば誰でも出来るので?」と。

今回の時計は、そのムーブメントの入手が難しかったと言う事ですが。
では、何故「ムーブメントの不具合箇所を直さない?」そうも思われるでしょう。
昔の機械時計の頃はそうでしたが、最近のクォーツはそうは行きません。
「オールド・クォーツ」の解説では”回路交換”とか言葉が出てきますが。

「オールド・クォーツ」=「高級時計」だったからそういう事が可能でした。
今のクォーツも確かに「回路部品」という物は存在します。
でも部品管理はされておらず。「ムーブという一式物」でしか存在しないのです。
よって歯車のみ交換・回路のみ交換なんて作業よりは
「”丸ごと交換”の方が安くて手間が掛からない」という事になります。
分かりやすく言えば「1.000円のビニール傘を骨組の修理や
”傘の柄”のみ交換をする所があるのか?」という話に近いでしょう。

「交換するムーブメントさえあれば」という事が今回の解決に繋がった訳ですが。
海外製造の時計を海外で購入された物で、日本では「特殊なムーブ」という
事でしたから、修理(ムーブメント交換)が出来なかった訳です。

ではその「ムーブメント交換」ですが、岸時計店さんは私にも「出来ますよ」と
言って頂きましたが。それをせずにお任せいたしました。

確かに交換するだけなら簡単なもの。言い換えれば分解修理だって簡単なものです。
大事なのは「その作業で動くのか?」と言う事と「他の部品を破損させないか?」
それが出来て初めて「お客様からお金が頂ける」という事になります。

電池交換なら私でも、このタイプは「裏蓋のココが要注意」。
このタイプは「電池を外すとき、ココを抑えていないとムーブメントが壊れる」
このタイプは・・・「電池を入れるときの問題点」等々あたった数が違おります。
一般の方が私の写真を見たら「何をそんなに勿体付けて」と思われるでしょうが。
そいう事を分かって電池交換していても成功「100%はあり得ないのです」。
成功率95%くらいですか、あと4%は何とか修復が効く。1%は諦めて頂く。

これが成功率90%・8%の修復とかなると費用を頂けるレベルでは無いでしょう。
友達やご近所等、無理が通る関係ならいざ知らず。

よって今回のAGATHA」のムーブメント交換。
私の目の前にムーブメントがあっても怖くて手は出なかったでしょう。
ムーブメント交換は出来ても「針の取り付け(押さえ込み)」
「スペーサーとのサイズマッチ」「巻芯の長さ」等々の不具合が出たら?
私では経験が浅すぎます。(まして入手が難しいムーブですから)
電池交換なら不具合が出た場合の修正は場数を踏んでいるから対応出来ます。
それでも「電池交換メンテナンス」となると、まだ経験不足を感じるくらいです。
ムーブメント交換に関しては何が起こるか?起こったらどう対応する?
分解修理も含めて今からでも、練習して場数を踏めば克服できるのでは?
そんなご意見を良く聞きます。
でも、その時間があればパソコンの時間に回したい。

「ムーブメント交換」は触り慣れた時計で怖さを知るが故に触れないという事ですか。
そう考えたら「ケース洗浄」という行為は我ながら頑張っていると思う次第です。


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