HERMES MEDOR・エルメス メドールの蓋バネ(2015.4.8)

本日は「HERMES・メドール」この時計事を知ったのは私、
ネットで受付する様になってから。
「他のメドールも参照」HERMES MEDOR 2 3 5 6

ガラスを覆う様に重い蓋が付いております。このバネが金属疲労で効かなくなり。
電池交換ついでに依頼を受けた事が何度か。

今までは折れた足は仕方がないとして巻かれた部分の端を、伸ばして足にして対応しておりましたが、今回の物は伸ばす度に「ポロポロ折れる」
かなりの金属疲労ですからバネごと交換するしか無さそうです。

こういう部品でもメーカーへ注文すれば3.000円とか5.000円って言われても仕方がない。
あっても、そのパーツ自体が経年劣化しているであろう可能性も。
そこでネットで売っていないか?と検索して問いあわせ中。
既製では無いサイズの様ですが。

蓋側の穴にバネが入ります。蓋だけで8gですから500円玉より少し重い。

バネが入る幅は「4mm」。そしてネットで検索してバネの用語があるようで。

「外径:1.84mm」
「線径:0.39mm」
「内径:外径ー(線径×2)という計算らしく1.06mmになりますか」
この内径ですが要は0.97mmのピンが通ればOKですからもう少し狭くなってもOK。
「自由高:3.6〜3.9mm」くらいか。
「足長:2.8mm」これは長くても自分でカットすればOKかと?。

こういう用語ですが、私もネットで受付るようになって。
お客様が言われる用語と、こちらの思い込みが一致せず困った事が多い。
そこで、問い合わせるのに先ずは用語を調べました。

あとは「バネの強さを表す単位」もあるようですが分からない。
ネットのやり取りで、こういう安いパーツを返品したり交換はご迷惑になりますから
高額のために何種類か購入してみるしかありません。
オーダーという手段もある様ですが、そういう注文は製造業の方などが部品として
何万個単位で注文する話でしょうから、難しいか?。

折れたバネですが。

装着するとこうなり。

ケース側と裏蓋側の穴の位置関係。

本来のピンはネジですが、テスト用に差し込むだけのCリングピンを装着。

奥まで入らない構造。

後ろから見た図。

忙しい時はこういう対応も出来ませんが、時間に余裕のある時なら
こういう対応も可能ですね。
プラス、ネットのお陰。ネットが無ければ探す手間を考えたら断りますが。
検索していたら「何とかなりそうな」と感じるくらいヒットします。

そして一週間後に受けて下さる会社を発見。
でもチャレンジしてみないと分からないと。

約,一ヶ月掛かりましたが試作品が出来て

試作品完成。シルバーですが、これにメッキをすると更に外注先を探す必要があり。
今回はシルバーのまま、進める事に。

良い感じで収まります。またバネの強さもオリジナルのように
「指を挟んだら痛いくらい」から少しマイルドな強さに。「装着例はこちらで」

これで一件落着!と思ったら。

穴の位置が違うモデルが届いた・・・。

それからゴールデンウィークも挟む事で数週間が過ぎ。

出来上がって来ました!
しかもご丁寧に二種類も?何故なのか装着して見ることに。

装着するとフタが浮きます。おそらくバネを装着するために
差し込んでいく方向も考慮して頂きご用意頂いたモノと。

もう1種では更にフタが浮いてしまう?。
前回の逆巻きのパターンの図面を反転して作成されたかと。
しかし何故、こんな事になる??

フタの穴を確認しますと意外な事に気がついた!
前回分の逆巻パターンと「穴の向きが違う」。
つまりどういう事かと言えば

このピンセットの向きが前回の穴の向き。

それが今回はピンセットの方向、斜めに穴が空けてある。
つまりバネを強くする工夫ですが、これでは装着の難易度が上がる。
そこでメーカーさんも工夫され「斜め→垂直方向」へ変更されたか。
もっともどちらが先か、知るよしも無いですが。

さて困った。これはバネの発注前に私が指示しなければ作成者側には分からない事。

バネの足が180°と、160°くらいで作って頂きましたが
それでも10°〜20°くらいは浮いている訳で。
足の角度を「90°〜100°」で作って頂くしかない。しかし今後の受付で
「穴の位置」「穴の角度」それも「フタ側」と「ケース側」4つの条件が
何パターンか出て来たら?
更に「穴の角度までもが何パターン」か出て来たら?。
組み合わせが膨大過ぎる。
その度にバネを作成頂く訳にもいかず。一念発起する事に。

ここからは「時計屋の仕事!」。手先・指先の器用さを発揮するしかありません。

自分でバネの角度を変更するしかありませんが。
バネの完成度が高く、それがネックになって加工が難しい。
弾力があって伸びにくく、かといって固くないので割れにくいという
絶妙な仕上がりなので「曲げる」という中途半端な行為は至難の業でした。

また,角度をキツくした事で装着作業の難易度が上がります。
これだけは次回もあるので「まぐれで入った」では困りますので。
コツを掴む必要がありますが、この依頼のために作った”仮のピン”が役立ち。
30分ほど掛かりましたがコツを掴むことが出来ました。

これでフタは浮かない様になりました。

問題は逆さ向けて開くようではいけません。でもバッチリ。
何度か指で開閉しても問題はなく「一件落着となりました!」