雑貨ウォッチの電池交換はしてもらえない?

防水時計・ブランド時計難民と「雑貨ウォッチ電池交換難民」2005年7月(記述)

先日メールで問い合わせがありまして
「何故、雑貨ウォッチは時計店で電池交換してもらえないのですか?」
といった問い合わせがありました。これについて私の感想を。

今の時代(2005年)で、雑貨ウォッチだからといって電池交換を断る所があるのか
と正直驚いた次第です。
でも実はこの私も1980年代の末までは断っておりました。
1990年代にはまったく普通に電池交換するようにはなりましたが。
今でもそういう時計屋があるのかと?

この原因は時代の流れと時計店のプライド(信用?)が大きな要因かも知れません。

このサイト「腕時計の基礎知識/クォーツ腕時計」や
腕時計の基礎知識/クォーツ腕時計の”Quartz”表記について。」を読んで
最近(近年50年)の腕時計の歴史(流れ)などをつかんで頂ければ解りやすいのですが。

今の腕時計は時間が合って当たり前のクォーツ腕時計で1970年代に発明されました。
それまでの時代、腕時計は機械時計が主で、
その頃は「精密機械扱いであり高額品」だった訳です。
(当時は腕時計を買うとなると少なくとも一ヶ月分の給料は必要でした)
1980年頃までは腕時計が高額品である限り
子供だけで腕時計を購入に時計店に行くことなどなかった時代です。

毎年、春になると学生服の中学生や高校生が正装した両親と一緒に
腕時計を購入の為に来店したものです。
(1980年代後半にはすっかり見かけなくなった光景ですが)

クォーツ腕時計発売から10年。
クォーツムーブメントの大量生産が出来るようになって一挙に
低価格のクォーツ腕時計が作られるようになりました。
と、同時に巷には雑貨ウォッチが氾濫します。
1980年代半ば頃からでしょうか?クォーツムーブメントが安く手に入れば
ケースと文字盤を組み合わせて自由に時計メーカー以外が腕時計を作る訳です。

話の前置きが長くなりましたが、何故雑貨ウォッチの電池交換が嫌われるのか?

一般の腕時計に興味の無い方に取っては時計メーカーと雑貨ウォッチと言っても
”大きさ・デザイン・重さ”どれをとっても「同じ腕時計」なのです。
違いは値段だけ。中身は分かりません。

これを時計店の立場から見るとどうなるのか?
1970年代までは機械時計が主でしたが時計店の人は”キズミ
(時計店の親父が付けてるルーペ)で拡大した世界で腕時計を眺めて来た訳です。
裏蓋開けると。

こんな世界広がっていた訳です。これが時代の流れと共に。

こういった電池式ムーブメントの世界が”キズミ”の向こうに広がります。

その後、腕時計の電池交換をする人にとっては上記写真のように
ムーブメントが簡素化していく姿を眺めて来ている訳です。
上記写真のムーブメントを眺めて、
セイコーでも簡素なムーブメントになって来たな、と。1980年代半ばです。

そこへ雑貨ウォッチの出現!時計店は電池交換に持ち込まれた雑貨ウォッチを見ます。

「ん?何だこの時計は、ちょっと作りが粗い感じがするが・・・
時計メーカーでも無さそうだし・・・まぁ、開けてみるか!」と
キズミを付けて裏蓋を開け、そこに見た世界は。

これは・・・腕時計と言うか・・・オモチャ?

プラスチックばかりが目立つムーブメントや、
金属部品でも薄っぺらなブリキの様な板1枚だけ。
こんなの分解さえ出来ないではないか。よっておもちゃ?と感じたものです。

そう、上の写真の様な金属の重厚なムーブメントばかり見てきた
時計店にとっては、この雑貨ウォッチを開けた時は驚いたのです。

今(2005年)の雑貨ウォッチは、そんな事も無いですが。
1980年代の雑貨ウォッチは実際問題、電池交換しても直ぐに止まったものです。
止まれば当然クレームになります。

「こんな腕時計の電池交換を受けたら
”あの店で電池交換したら直ぐに止まった”」と
なる訳で、これは時計店の信用問題だ!

と、時計屋は思いました。私など分解掃除までする職人では無い者でもそう思いました。
よって、職人さんが雑貨ウォッチのムーブメントを見た時は、
もっとショックだったと思おります。
職人さんの世界では分解出来ない構造の物は”腕時計では無い”訳です。

そして職人さん個人の感情としては
「プロがオモチャの腕時計を触れ無い」とプライドもあります。
変な比喩ですが、草野球の素人がプロ野球のピッチャーに向かって
「お前と勝負がしたい!」と言ってる様な感覚ですか。
まぁ、遊びがてらに投げてやって打たせて上げたら”あのプロの球は何でもない、
オレが打ち崩してやった!”と吹聴されるようなものです。

つまり”関わらない方が無難”となる訳です。
それがつまり”雑貨ウォッチの電池交換はして貰えない”となります。

それに雑貨ウォッチといっても”ピンキリ”ではありますが、
実際問題として電池交換の為に開けても閉まらなくなったり。
また、ベルト調整をしていたらベルトが壊れたり。
電池交換したら針が外れたり。
それを修理しようとしても素材が悪い為に直らなかったりで
お客様に叱られる訳です。
とにかくは電池交換する者の事はまったく考慮されておりません。

ほんと時計店によっては作ったメーカーを恨んでいる人が居ても不思議ではありません。

しかし、私の場合は1990年には、もう普通の腕時計として電池交換を受けていました。
これも雑貨ウォッチの電池交換が月に1個か2個レベルなら私も受け無かったでしょう。
しかし持ち込まれる電池交換の半数近くに達してくると
無視は出来ないレベルになってきます。
そうこうしている間に雑貨ウォッチの性能も上がって来ましたし、
また扱いに慣れてくると”このタイプはらココが壊れやすい”とか分かってきます。

長年雑貨ウォッチの電池交換をしてきた者としては
”時計と思って電池交換してはいけない”ですか。
”腕時計よりも脆い物”そういう積もりで掛からないと大変な目に遭おります。
もちろん電池交換の時は”全く普通の腕時計メーカーの時計と同じ扱い”です。
特に雑貨ウォッチである事を言う必要も無いですし、
また言われた方も良い気分ではない事ですから。

そんな理由から「時計店主=職人さんの店」では
今でも雑貨ウォッチの電池交換を拒否する店があっても不思議ではないでしょう。

でも雑貨ウォッチを買ってる人が現実に多数存在します。
かといって間違っても時計店が売る事はできません。
今の時代は雑貨ウォッチであれ何であれ”売れる物は売る”。
その姿勢がないとダメの様で。
今後は、もう時計店で1万円以下の腕時計を並べているようでは生き残れないでしょう。
それは家電店やホームセンターの領域になりました。
今後の時計店は高額品を中心に売る店しか生き残れなくなります。
それさえネットショップに移行しております。

ここは電池交換の話でしたが、腕時計の電池交換でさえも最近は時計店では無く
家電店、眼鏡店、合鍵コーナーetc。
時計店から見たらオモチャでも、新たに参入してくる電池交換コーナーとしては、
時計店が敬遠するなら丁度良いじゃない!
売り上げになるならって感覚ですか。
そういった所が簡単に電池交換を受けてくれるなら
消費者から見た場合、何も時計店で換えなくても良い訳です。

ちなみに、この「雑貨ウォッチ」って呼び方ですが
一般の人ならファッションウォッチですか。
腕時計職人さんの世界では”オモチャ時計”です。
写真の様な高価なムーブメントを多く見てきた人からすれば、
そう呼んでも仕方がないでしょう。
私のような販売がメインの時計店では「雑貨時計」と呼びます。
これは何故かと言うと、雑貨商品のバックや財布・アクセサリーを扱う問屋が
商品の案内に持ち込むからです。
”雑貨問屋が持ち込む時計なので雑貨時計”それだけの理由です。

しかし最近”雑貨ウォッチの自動巻”が市場に・・・・これは1ページ必要でしょう。

 雑貨ウォッチについて、もう少し知りたい方は雑貨ブランドとは?でどうぞ。

その雑貨ウォッチとはどの様な腕時計かは、
電池交換コーナー雑貨ウォッチ腕時計の電池交換修理でご覧ください。

腕時計修理の質問集トップに戻る 2017.7.11修正