律儀なお客様
「2005年10月6日」
私の店はスーパーの中にありますから平素普通のお客様は、ざっくばらんなお方ばかりです。基本はエプロンをしたままの方がほとんど。店から駅の改札までが2分という利便性からお出かけ前か、帰りに立ち寄られる方も多いです。
この駅の改札まで”2分”と言うのは便利な様ですが、その分電車の時間ギリギリの判断で電池交換に来られのが辛いところ。駅まで歩いてきてから”発車まで5分あるわ!電池換えていこう!”って方が多いのは仕方がありません。
カウンターに”ポン!”と腕時計を置いて。「換えといてね〜!帰りに寄るわ」って方も珍しくありません。そこへ先日、60代は後半か?といった女性のお客様が来店されます。店で立ってパソコンを触っていると、ふと視線を感じます。見ると服装は普通の普段着といった感じですからお出かけでは無さそう。上品な感じの方です。でも、じぃ・・・・とこちらを見ております。でも店にはまだ入っておりません。
視線が合ったので軽く会釈をしますと、向こうも会釈で返します。それでも店に入るでも無く、立ち去る訳でもなく・・・
「あの〜、何かご用でも、おありでしょうか?」
「はい、実は本日は大変不躾なご用で参りまして、ご無理に上がりました」と、お辞儀。
(何か嫌な雰囲気、こういうのって何かの勧誘とかのパターンだぜ!)
「いえいえ、ところでどのようなご用件で?(¬、¬) 」
「実は・・・そのぉ・・、コレなんですが」
と、取り出したのは”ベルトが外れた腕時計”。それも革バンドタイプでバネ棒を紛失している訳でもなく外れているだけですから、私などは爪でちょんと突いて簡単に入ります。(まさしく瞬間芸)
「ハイ、どうぞ、直りましたよ」
あまりもの早業であった為に、お客様は”直ったって・・・何もしていないのでは・・・。と腕時計を触っております。
「確かに・・・・直った・・・。有り難うござおります。」
「あの〜、如何ほどのお支払いをさせて頂ければ宜しいでしょうか?」
「如何ほどと言われましても・・・瞬間に直った様な事ですから宜しいですよ」
「いえいえ、そういう訳にはいきません。直して頂いておきながらお支払いも無しでは、お手数を取らせた、だけになって心苦しいです」
「いえいえ、本当に宜しいのですよ。手間と言うほどの事ではありませんから」
この時に、別の女性のお客様が入って来ます。見た目30代半ばの主婦といった感じ。こちらの会話をしばらく聞いております。”早くしてよ!こっちは待ってるのよ!”って顔で睨んで待っております。
「そう言う訳にはいきません、やはり例え100円でも取って頂かなければ。」
「いえ、ほんと宜しいですからお気遣いなく。」(次に待ってる方が・・・居るのに早く帰ってくれ〜)
「ではまた何か、お礼として購入させて頂きますの・・・」ここまで言うと待っていた女性が後ろから。
「あんたね!店の人がいいって言ってるんだから。さっさと帰ったら?こちっは急ぐのに待ってるんだからね」
と、今度はこちらに向かって。
「ちょっと、この時計のバンド調整してよ」
「ハイ、分かりました」と、言うが・・・こういった荒手な人は恐らく・・・と。
「あの〜、調整料が掛かりますが宜しいでしょうか?」
「え〜、お金取るのぉ〜。そんなの何処でもタダよ!」
「いえいえ、手間も掛かりますから」
「手間たって、あんたら専用の工具とか持ってるんでしょう。だったら手間なんて問題じゃ無いでしょう」(やはりね!そうだろうと思ったOo。。(_ _))
「とにかく、費用は必要ですが調整させて頂いて宜しいでしょうか?」
「もういいわ!タダの店に持って行くから!」
と、ツカツカ・・・と出て行った・・・。そこで先のお客様、ぼぉ〜ぜん!と見ていました。
「まぁ〜!凄い。変わった方が居られるのですね・・・呆れますわ。良く黙って聞いて居られました事」(そりゃぁ〜 、貴方の様な律儀な方から見たら、かなり変わった方でしょうOo。。(_ _))
「いえいえ、僕ら慣れておりますし特別に変わった方でも無いですよ」
「そうですかぁ・・・ところで先ほどの続きですが例え100円でも・・・」
「いえ、だから宜しいですからご遠慮なく!」と言うと。何度もお礼を言われて、何度もお辞儀をして。その度にこちらもお辞儀をして、それから延々と5分。挙げ句は100円玉をカウンターに置いて帰られました。
でも・・・あ〜いう荒手のお客様でも”待たされ無ければキツイ事は言わなかったと思うのですが。こちらが丁寧なお辞儀をしている間、待たされてイライラさせてしまった様です。
そして延々とお辞儀されている間にも。
次の方がイライラして待ってます!(v_v)
一気読み次は「フェイント」へ。