ロレックスと老人

「2005年8月28日」 

昨日、おじいさんがやってきます。しゃきしゃき歩きますしご健康そう、でも耳が遠いのです。よって声がかなり大きい!腕にはROLEX-Date Just。

「あっな!・・・なおっか!・・・」(あのな、この時計直るか)と言われていると・・思うのですが。

「あの〜、動いてますが・・・遅れます?」

「なおっか!・・・」(まったく聞こえていないようですね)

困っていると、娘さんらしき人が慌ててやってきます、娘さんと言っても60以上か?

「ごめんねぇ〜、もう家で時計、時計って騒いでいたのに急に居ないからココかと思って来てきたのよ、ごめんねぇ迷惑掛けて、こんなじいさん来たから困ったでしょう!何せもう91歳やからね。元気やけど耳が聞こえないのよ。91よ!元気でしょう。」と笑ってじいさんを指さすと、じいさん喜んでいます。(;^_^A

「ところで時計どう?直る?」(と、ちょっと裏蓋を開けてみると4年前に当店で分解掃除されています。40年前に買ったというご自慢の腕時計)

じいさん、待っている間も奇声を発しながら足踏みして、そわそわした感じ。もう子供帰り症状というか可愛い感じがします。しかしさすが同居人、ジェスチャーや表情で意思の疎通が出来てる所がすごい。

「そうですねぇ、これもう40年は使われていますが良い時計ですから分解さえすればまだまだ動きますよ。ただ以前にも分解されていますが取り立てて油ぎれにも見えませんが・・・」(これは単なる自動巻機構が運動量の不足による巻き上げ不足ではと?)こちらの例なども。

「あの分解しても、自動巻ですから基本的に運動量が足りないとゼンマイが巻き上げられない訳でして、それが原因で時間が合わないのでは?運動量の問題だと分解掃除しても意味がなくなるのですが」

と言うと。何やらジェスチャーと簡単な筆談。おじいさん指でOK!と了解頂いたようです。しかし・・・あれだけのジェスチャーと筆談で自動巻の巻き上げ量の事を伝える事が出来たのだろうか・・・?

その翌日、「なおっか!・・・」その息子さんなのか、じいさんと60代?の男性が一緒にやって来ます。

「にいちゃん腕時計直したってぇ〜な。昨日から何で直らんのやってうるさいね」

「昨日、それをご説明したはずなのですが・・・自動巻の巻き上げの話・・・」

「にいちゃんな、あんたオナゴに機械のこと言うてもあっかいな!じいさんに”壊れたからダメ!”言うたらお終いやがな。そんなもんで、じいさん納得するかいな。なんぼ91でも動いてる時計”壊れてるからダメ”言うて信じるかぁ〜」

”壊れたからダメ”とは・・・凄い解説。やはり伝わっていなかったようですね(;^_^A

「でももう、ご高齢ですから自動巻が巻き上げれなかったら、分解の意味が無いのですが」

「あんた何、言うてるねん。おれやったて60超えた男や、自動巻時計くらい知ってるがな、91のじいさんやけどな、自動巻充分大丈夫やって」

「でも91でしょう・・?」

「91でも普通の91やないで、耳は遠いけど昔船大工しよった人やからな、今でも毎日暇つぶしに家のあちこち、せんでもええ(しなくてもよい)修理して毎日、金槌やノコギリ使ってるのに巻き上げ不足なんか、あるかいな!頼むは直してやってぇ〜な!」

「たしかに!状況から巻き上げにまったく問題無さそうですね。(;^_^A。ではお預かり致しましょう」

約10日のお預かりですが・・・3日目から、じいさん毎日やってきます。

「あっな・・・なおっか・・・」(もう時計が直るのが待ち遠しくて仕方がないようです。その度に娘さん飛んで来て「ごめんねぇ〜!」と、連れて帰ります。

そして毎日、電話が掛かってきます。「毎日、すまんなぁ〜!じいさん”まだかまだか、電話しろ”ってうるさいから、掛ける振りでもせんと収まらんのや。どうせ耳聞こえへんから、こうやって話してたら店に聞いてくれよるって思ってるわ。ほな頼むで!直ったら電話頂戴よ」

と毎日同じ電話が掛かってきます(;^_^A。そして職人さんの方からショックで歯車の交換が必要なので予定が2日ほど遅れますと。って事は歯車が壊れるくらい大工仕事がハードと言うことで、かなりお元気な証拠!早速、電話して遅れる事を伝えておきます。ところが”修理預かり伝票”には日にちが記載されていますので、その日になると。

「あっな・・・なおっか・・・」まだですね(=^^=)

そして修理の職人さんから、今日発送したからね。と電話が入ります。早速お待ちかねと”明日の午前中には届きますよ”と電話します。そして受話器を置いた10分後。

「あっな・・・なおっか・・・!!」まだです明日です。(=^^=)

その後、また娘さん飛んできて。

「おとうさん!もう電話してたら靴履いていたから、まさかと思ったけど、やっぱりココやったんやね。慌てて追いかけて正解やったわ。ちょっと兄さんメモ貸して」

と言うと用紙に”明日、直る”と大きくかいて、じいさん納得。

また翌日、仕事場にいくとまだ開店もしていないのに、じいさん店の前に座っています。

「あっな・・・なおっか・・・!!」

いやまだ届いていない(;^_^A。とそこへクロネコヤマトのトラック通ります。慌てて手で制止させて、ドライバーさんに。

「うちの荷物乗ってる?」「これですか?」

って、ところで目の前で梱包を解いて、腕時計をお渡し。じいさん大喜びで

なおっふぁ・・・!!なおっふぁ・・・!

と、一目散に帰って行きます。

修理代をまだ頂いていないのに(v_v)

入れ違いに娘さんやって来て。

「じいさん来なかった?まだ届いてないでしょう?」

「来られましたよ。もう腕時計届いて大喜びで持って帰られましたが」

「持って帰ったって・・・お金は?」

「まだです(;^_^A」

慌てて、お金をボクに渡して。

「ありがとね!ここ終わったら多分、電気屋に行ってるわ!先に医者に行ってたらどうしよぉ〜!ほなね!(それではね)」

と必死で追いかけて行った。

毎日、ウチだけでは無くて一日中”おいかけっこ”してたのですねぇ〜!でも微笑ましいご家族ですねぇ。

一気読み次は「急ぎの電池交換」へ。

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