オークション8話

”パンチ佐藤”ではないですが、この2000年頃の感覚を階段に例えてみましょう。

それも人生と言う長い階段ですから登って行くしかありません。降りる事も出来ますがその下に見えるのは海面です。この潮位は変動しております。潮位は”蓄え・体力”とでも言おりますか。降りる事も出来ますが範囲があります。勿論、踊り場もありますし、上は無限大です。でも上が見えるときも見えない時もありますね。

この頃は長期療養明けで、遙か前方まで続く長い踊り場をゆっくりと歩いております。上は曇って何も見えません。そして下を見ると潮位がどんどん上がって来て足下に迫る訳です。いつまでも踊り場で留まっては居られません。でも上を見上げれば微かに晴れ間が・・・

さぁ、商品を検品したところで早速電話です。

「まいど!商品届いたよ」

「見て貰えましたか?どうでした?」

「ん〜結果は行ける!。問題は値段だな。ところでいくら?」

「それがまだ、値段が決まっていないのですよ。前例がありませんから」

企業ってところは何故にこうも”前例”にしばられる?。前例が無いと動けないのか?特に時計業界は役所体質があります。前例にしばられる姿は未だに私が感じる業界の不思議です。こちとら前例で動いていたらオークションなんて参加も出来ないのに。

「で、いくらで卸す?」

「いくらなら売れると思おります?」

「それは国内モデルの通常市場割引価格。
そこから判断すればわかるだろう?」

「では、いくらなら買って頂けます?」

「○○〜××の間だな。先ず1円スタートしたら5.000円にもならんよ」

「良くそんな事言おりますわ。物の価値を良く見てくださいよ」

「良く見なくても時計の価値くらいは分かるがな!
でもな、売るのはネットなんだぜ。写真だけで判断される世界なんだ、オリエントってブランド名のみで高値が付くと思うのか?」

「分かりました。ぼくらでは雰囲気さえ分からないのでお任せします。」

「そう来なくっちゃ!値段はまた出品してから相談だな。
それに1万円でも売れなければ出品する意味も無いしな。」

取りあえずは”30本のメカウォッチ、海外モデル”が届きます。

その時計の顔ぶれを見て大袈裟に言えば販売戦略を練ります。

腕時計と言えばやはり何処もそうですが、高級品を漂わせて売ります。そして品格と。当時でもメカウォッチといえばブランドなら安くても10万円はする訳です。

オリエントというメーカーの売りはメカウォッチが2万円〜10万円で買えるメーカーです。

まして今、売ろうとしているのは海外モデル。売値は8.000円〜19.000円です。あとはオークションの世界ですから如何に入札者に信用を与える事が出来るか?

そして如何にその値段の商品に見える写真が撮れるか。
以上に見えても以下に見えてもいけません。最終的に手にしてみて後悔させては信用を失おります。今のオークションは実際の価値の数倍に見える写真ばかり、その結果は評価みれば分かります。

「オリエント・海外モデル・自動巻」と言うアイテムと「オークション・信用・購買意欲・安心感」これを噛み合わせる事が出来ない限りは売れない・・・。

そして私のオークションスタイルが決定します。

この頃、まだ思う様な写真は撮れません。ブログでも書いた写真の師匠である警備員のおじさんの手ほどきを受けながらのスタートです。もう後戻りは出来ないのです”廃業撤回”と退路を断ってしまいましたから。

そしてネットでは何がトラブルになるのか?誰も聞く人はおりません。しかしオークションには評価欄があります。これは助かりました。自宅では毎日評価ウォッチング。そこには”オークション(ネット取引)では、こういった事でもトラブルになる”といった事が分かります。

これを分かりやすく言えば、繁華街には色んな実店舗が並んでウィンドウショッピングが出来ます。しょぼい店も豪華で荘厳な店もあります。でも店頭には、どの店も店頭にお客様からあった実際のクレームが表示されております。こんな現実はありえませんがオークションって所はそれと同じなのです。

豪華な店の店頭に「いつになったら届くのですか?」とか「お前みたいな奴はオレの店に近づくな!」など。でもしょぼい店の店頭には「気持ちよく買い物出来ました」。さぁ、あなたはどんな店を選びます?

その時、思ったのは”これはかなりの消耗戦になるな”でした。でも実際は想像を超える消耗戦になりました。もっともそういった事を意識してオークションに参加する人も少ないと思おりますが。そこからトラブル無く売る為の自分の成す術が見えて来ます。

まぁ、それだけ真剣だった・・・いや・・格好付けるのは好きではありません、ただ必死だったのです。”悪い”が付いたら購買意欲がなくなるだろうと。そこはオークション参加者の判断に委ねるか!

それとオークションに参加すれば、これは休みなど取れないぞと感じました。でも元々、休みなんて私には無い!。これは好都合。自分の今の環境をそのまま活かせる世界です。

実際に見つけたオークションの個人売買での評価ですが。
「非常に悪い」:落札したのに5日も連絡がありません。
返答:旅行に行ってたので仕方がないでしょう。出品したら旅行に行ってはいけないという規則でもありますか?ほんと、ゆっくり旅行も出来ないです。気分悪いです!

これがオークションか・・・・と。

さぁ、毎日の様にセールスから電話が入ります。入荷商品の形状と仕様の報告です。何たってカタログも無く写真も無い商品を仕入れる訳ですから。

そして向こうも大変な訳です。海外モデルは東京本社に入ります。写真はありません、よって大阪営業所のパソコン端末で物流の在庫状況が見える訳ですが、国内モデルとは縁のない型番が並ぶ訳で値段も表記もされていない商品を選ぶ訳ですから。端末叩いて注文して届いた商品を見て。”なんだこりゃ〜!”って物もあったそうです。(;^_^A

海外モデルだけではなく、国内モデルでもカタログ落ちした商品であれば、物流に在庫があればこれも特別に安く入れてくれていました。それはセールスも端末叩いて品番を見れば商品の顔が浮かびます。その場合も携帯に連絡が入ります。

「こんなのこんな値段で出ますが、どうします?」

「ヨシ、買った!」です。

毎日の様にオリエントから商品が送られて来ます。即、写真撮り。しかも解説の内容を考えながら撮影しております。毎日梱包もしますし、メールもします。まさしく体が2つ欲しいぃ〜!状態。もちろん店もヒマになったとはゆえ電池交換や販売もしている訳です。

オリエントの腕時計が本格的に稼働し出すのは2001年5月からです。そう企業って所は”1年の実績と前例”が無いと動きません。よってオークション参加の2000年5月〜2001年5月までは練習がてらに「ZIPPOライター」「サングラス」「雑貨品」「家族の不要品」「友人の代理出品」などを出品していました。メインIDの評価数「190」。そして5つのIDで1年間の評価数「680」にも達していました。そして「悪い評価は無し」「どちらでもない”1つ”」これは大きな自信に繋がりました。

(と、いっても以前に紹介の私のオークションデータベースを検索してみて2006年の今、気が付きました。我ながら凄い!と。当時はそんなデータの整理や分析などしているヒマは無かったですね、必死でした。)

それだけ取引すると問題は入金確認。2000年当時「ジャパンネットバンク」も「郵貯ホームサービス」もありません。「入金確認宜しくお願いいたします。」とメールが入る度に銀行や郵便局に走り回ってる訳です。体力のない当時はこれが一番堪えましたね。

それに写真撮り・加工・解説書き。これが慣れておりません当時では1日で3個の出品が限界です。まだADSLも無い頃です。

オークション9話へと

このオークション話は、ある一通のメールから始まった・・

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