町の時計屋(オークションでの体験)

ここでは腕時計の修理や町の時計屋について書いて見たいと思います。

と言っても私の主観的なものになるとは思いますが、それが一番ご理解頂きやすいかもと思っております。

主観的:つまり腕時計職人では無いけれど腕時計の修理を受付してきて、様々なパターンを経験してきた者としての立場から感じる時計屋についてや修理ですね。

先ずは、5年前(2001年当時)頃になりますが、私がオークションで実際に経験した話でも書いてみます。このサイトでオークションの生い立ちなどは書いてきました。その過程でアンティークな機械時計を出品した経験談をご紹介致しましょう。

私は今まで(2006年5月)までダイエーの中でテナントとして営業をしていました。店の立地や商品構成から来店される方に腕時計好きと言える方は殆ど来店されません。腕時計が止まったら買い換えか、止まった時計が動くように修理するかどうか?。そういう方になります。私でも簡単な修理はしますが職人ではありません。(職人と言える腕は持ち合わせていないというのが正確か)

昔は電池交換だけでも多く忙しかったので1990年頃から修理は外注する様になりました。またオークションに参加してからは超多忙につき殆ど私が修理することは無くなりました。(外注する経緯などは後日。)

2001年オークション全盛期、オリエントの海外モデルが売れ出した頃で、売れる事が分かっていても実績や何だ、社内の規則で動かないメーカー。その頃、時間の余裕を使ってオークションでアンティーク(といっても単なる古い時計)の自動巻や手巻きを出品していた時期がありました。

たまたまオークションをウォッチングしていて機械時計が盛況である事を発見したからです。それまでは機械時計なんて過去の産物と思っていました。オークション(ネット)に関わるまで、普通の主婦相手の店であった私などは”井の中の蛙”であった訳です。

この中古時計の出品には、かなり迷いました。何たってこちらダイエーの中でずっと店をしていましたからクレームもかなりのパターンは経験してきた積もりです。それに中古時計出品者の評価を見ていると、内容からクレームの怖さを知った者では、とても参加出来るものでは無かったです。そう感じるのは、やはりダイエーという上場企業のクレーム体制に合わせて営業してきた者としては過敏にならざるを得ません。でも当時の状況は売れる物は何でも売らないと食って行けない時。腹をくくって出品を決意しました。(実際には大きなクレームになる事は無かった事に安堵)そこでウォッチングしていますと”相場は安い”。もちろんキングセイコーやIWCなどは高値で落札されていましたが。

2001年当時では何が高値になるのかさえ分かっていなかったのです。兎に角は古い機械時計は売れているらしいと。そこで父も50年以上時計店をやってる訳ですから、親父のデッド品やガラ箱から、かなり「中古時計をオークションに出品して売りました。」

大体の腕時計の相場も分かって来たある日です、セイコーの中古品美品でしたか。これはいくら売れても10.000円が限界か?。ヘタすれば5.000円くらい?(私の場合1円スタートではありませんが、13.000円で売れなければ徐々に値段を下げて行く出品です)そう思ってネジを巻くと動きますが時間がかなり遅れます。いくらで売れるか分からないものに外注までしていたら採算が合いませんから、親父に調整のみして貰って出品しました。ただ問題は親父が”OHしておいたから”と言う言葉を鵜呑みにして「OH済み」として出品、そして落札されました。

そして落札者から「届きましたメール」の内容は・・・

「本日、商品が届きました。迅速なご対応有り難うございます。さて本商品”OH済み”と表記されていましたが2番車と3番車に油が乗っていませんし、歯車を外すと汚れが付着しています、精度は許容範囲内ですが、この状態ではOHとは言えないと思います。まぁ、ある意味自分で直す楽しみも出来たので今回は特にクレームとは致しませんが、表記には気をつけられた方が良いと思います。」

と、メールが届きました。何でもアンティーク専門の時計店を運営されている方でした。そうか・・・オークションって世界はマニアだけでは無く、アンティークショップを運営されている方にとっては絶好の商材調達の場でもある訳か・・・・怖っ!

このメール、良く考えれば怖い話です。私としては良い経験になりましたが。
ただ現実として、親父には「こういう事があったから、OHまでやっていないならOHしたって言わないで欲しい」。そう言えば。

昔気質の年寄りですしオークションの雰囲気さえ分かりませんから反応は。

「5.000円でしか売れないかも知れないのに、まともなメンテナンスなんか出来るか」

(ある意味オークションの雰囲気が分からない親父に取っては当然な話。間違いなく1万円頂けるならキチッとやるが、5000円の可能性もあると聞けば、まともに出来ないでしょう。まして自分がユーザーと接する訳では無いですから。
今のオークションでもメンテナンスする者と出品者が同じ方は少ないと思います、よって私の様な経験をしている方は多いかとも思います。)

「だったら、調整のみと言ってくれてたら良かった話なのに」

「いったい、何処のどいつや!他人の修理にケチ付ける気か電話番号教えろ。」となります。そんな事すればどの様な事に発展して行くか分かっているのか?。オークションであれ、店であれ、お客様は私と取引してる訳であって、実際に直した人ではありません。

でもそれが親父の気質でもあります。実際2001年頃ではそういう気質の方が中古時計をオークションに出品されていました。評価は想像どおりです、数年でオークションから去りました。(オークションから葬られたと言った方が正確か。)

私が明石で店をしていた頃のある日(今から15年くらい前のある日になりますか)、近所に、もう1件時計屋さんがありました。(もう10年も前に廃業されましたが)親父さんは当時で60以上の人でしたか、販売よりも修理がメインの時計店です。

ある日、お客様が掛け時計を抱えて修理に来られました。ふと見ると近くの時計店のシールが貼ってあります、しかも保証中。これはウチで直せば費用が掛かりますから、お客様には「保証中ですし、ましてや近所。何もウチに持ち込まなくて購入店で見て貰えば無料ですよ」と。

「でもな・・・あそこの親父、偉そうに言うからな。こんな事で持ち込んで叱られて嫌な気分になるのも嫌やし、手間賃で高く言われてもな・・・」

「そんな事はありません、保証中に止まって電池は正常なのですから、これは不良品としてメーカーに送ってもらえば済む事です。親父さんに手間掛ける訳ではないですよ」

「なんだ、そうですか。親父さんに手間掛けさせたら悪いかもと」

こちらダイエーの中でやってますから、神様みたいなお客様。ウチなら「責任者出て来い!」の世界。そしてお客様がそちらの店に行った数時間後、その時計店から電話が掛かって来ました。(普段の付き合いはまったく無い店ですから初めての会話です)

電話を取ると、いきなり。

「おい!人の店をバカにするな!」

「はぁ?あのどちら様で」

「○○時計や!お前ら若いもんが何、他人の店けなす権利があるんや!」

「あのですね、いったい何のお話をされているんですか?頭ごなしに怒鳴られましても」

「お前今、ウチの客がそっちに行ったやろ、他人の店の商品を不良品呼ばわりしたらしいな」

「呼ばわりはしていません。不良品扱いになるので無償対象であるとは言いましたが」

「ほれみろ、今”不良品”って言ったな!」

「あのですね、では他にどの様に言えと言うのですか?」

「保証中やけど調子が悪い時計と言え!」

「だからそれを不良品と言うのですよ」(こんな調子ですか)

ある意味この雰囲気が私がイメージする町の小さな時計屋の雰囲気です。

このイメージの年代の方が、まさか自分でパソコンを操作してオークションに参加は出来ないとも思います。でも実際には2001年当時、全国の時計屋の中で何件かは、こういった気質の方がオークションに参加していたのです。(それは凄い喧嘩腰オークションでした。)

今の時代40代以下の時計屋さんは、そんな事も無いとは思いますが。でも逆に30代・20代で自分がオーナーの時計屋さんってあるのかな?まして修理も出来る職人さんも兼ねた。時計業界の時代背景や景気からその年代で時計店のオーナーをやってみようとは思わないのでは?。

話が逸れましたが。

時計屋が時計屋に腕時計を売る・・・何という世界。実際のスーパーのテナント営業では考えられない事が起こります。そしてオークションに参加してみて世の中には”腕時計好き”がこんなに多く居るのかと言うことも学びました。オークションでは自動巻時計を主に出品していましたが、一番おそれたクレームは自動巻ブームと言う事だけで自動巻の特性も知らないで落札して”精度うんぬんのクレーム”。しかし、こういったクレームが皆無に近くネットで腕時計を買う人の時計に対するレベルの高さを実感しました。それだけ店では腕時計の知識が無い人が相手の商売ですから、私にとってはそれが普通の感覚になっています。(それはCooの腕時計”笑い話”を見て頂ければご理解頂ける思います)

その時、感じたのはネットでの中古腕時計の売買では「購入者は自分で裏蓋を開ける事が出来る」。それを意識しておかないと生き残れないだろうと。店では考えられない話ですが。それからと言うもの中古時計の出品は「調整済みではありますが分解掃除まではしていません」と表記するようになりました。

それまで私の店では腕時計マニアの方は少ないですから「用は修理完了後、半年の保証が出来ればOK」くらいの感覚で営業していました。でもネットではそうはいかないだろうと。その発想が、その後”どうせ開けられるなら写真でムーブメントを見せて上げた方が親切か”といったものに繋がっていく訳です。

当時、中古腕時計のオークション出品で”ムーブメントの写真”を載せた出品者は無く私の出品は写真だけで売れていました。(今は当たり前になりましたが)ところが今度は。オークションの質問で。

「写真を見ますと香箱の横にスレがありますが、これは何に接触して出来たスレでしょうか?」

腕時計出品者の皆さんは、どう思われますか?これはもちろんクレームとかの性質のものではなく、単に腕時計に詳しい方で自分でOHが出来る方が送信した”純粋な疑問”です。

オークションは落札の相場が安いですから、手間を掛けるよりも安い方が売れます。その風潮は今もオークションでは残っています。でも、ボクが中古腕時計を出品していた頃は物さえあれば売れていました、でも今は「外見が綺麗」。そういう物が売れている時代になっています。そうなると出品業者は「外見さえ綺麗であれば売れる」と、ムーブメントは調整のみで外見を綺麗にして出品しだします。

今でもそれを「OH済み」と表記した人もいます。紛らわしいのは「クリーニング済み」なども悩みます。ムーブメントなのか外観なのか?中には全ての出品に「ジャンクです、動作確認もしてません。キズ多々あります。」って方も居ます。ある意味良心的と言うか手堅いと言うか、そうしておけばクレームにはならないでしょう。ただし落札価格は低いですが。

私の性格からは、その後オークションで”OH済み”を記載する出品は想定する落札価格が3万円を超える腕時計しか外注メンテナンスまでして出品は出来ません。それ以外は「兎に角は動くようには調整してあります」と表記してムーブメントの写真掲載です。

ただ写真の掲載は裏蓋を開けている訳で、一般的には時計屋と思われます。まして中古の機械時計ばかり出品していると”かなりの時計通”と、思われる様で回答不可能な難しい質問も来ます。またレディースのアンティークウォッチの質問では

「この腕時計結構メッキに汚れがみえますが拭けば落ちますか?。また普段使用(一般的な家事)には問題ないレベルに調整してありますか?」

これどう思います?。この質問からはアンティークな時計の防水性能・耐磁性・精度。そういった事は知らない方がアンティークって可愛いから、一つくらい持ってみるか?。って感覚に見えます。

この質問への回答は「まったく普段使用には耐えられません」と回答するしかありません。そういう方に落札されたら、家電製品の回りで使って普通のクォーツと同じ感覚で使われてクレームになります。また、それをメールで解説する手間を考えたらそう回答するしか無いのです。

この頃のオークション、つまり自分が手がけない物を自分の責任で売るオークションは胃が痛くなるオークションでした。

以上がオークションでの経験ですが、次回はその昔、店で受け付ける修理は父が受け持っていましたが、それが1990年頃から外注すようになった経緯などを書いて見たいと思います。

次は「修理を外注するに至った経緯」ですね。

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