ご理解あるお客様/受付限界の時期は過ぎた

先日、電池交換のご依頼がありまして「40年前の腕時計」で正常動作品。
ご理解あるお客様でしたから、最初はお断りしながら受付になった事例です。

「以下がその」ご依頼内容ですがデジタルとアナログ複合時計

電池交換+洗浄の3,100円コースを希望します。 全く同じ時計の電池交換+洗浄がWeb上に掲載されておりました。現在問題なく稼働しており、電池蓋を外して中を見ても液漏れ等ありませんので、Web上に掲載されていた時計ほど気を遣う必要は無いと思いますが、年数が経っているので汚れ等はそれなりにあるかもしれず洗浄を希望するものです。 液漏れや不具合等もなく現在動いている時計ですので、「不動でも1000円程度支払う」の意味がわからず「不動は支払わない」を選択させて頂きましたが、私の知り得ないような意図が何かあるようでしたら一報下さいませ。

そこで私の返答は、この場合「一旦は、お断り」となります。

今回は電池交換のご依頼有り難うございます。
まず「不動は支払わない」ですが、「正常動作は受付不可」にも繋がります。
ご自分でも内部を確認されたという事で。
そこで私が預かって、洗浄作業をして不動になれば100%
「店が壊した」となるのは当然。
古い時計はそういう危険があるので「正常動作は受付不可」でお断り対象です。
「不動は支払わない」は基本的に”費用は頂けない”と判断します。
よって蓋を開けて電池のみ入れ替えて不動の場合は何もせず返却となります。
今回の場合「正常動作」「支払わない」では受付のしようがない。
そいう判断になります。
何が起こっても弁償も修復も原状復帰も不可ですからお覚悟の上なら受付可能です。正直、私もこの時計の「電池交換&洗浄」はお勧めはいたしません。

それに対するお客様の返答が。

 お忙しい中お返事を頂きましてありがとうございました。
 内容理解しております。

 私も商品は違えどメーカーに勤める身ですので、正直、部品の
供給がなされない製品の分解修理などはいかに精通していたと
しても結果の保証(=請負仕事)をすることはできないですよね。

 できるとしたら、腕前を信頼した委任業務までが限界だと思い
ます。

 例えるならば、ひとりひとり異なる人間の、これまたひとりひとり
異なる病状にベストを尽くして臨まれるお医者様のような仕事で
あると思っています。 しかも、良心的な価格でのサービス提供ですね。

 清瀬様の対応可能な範囲でベストな対応を頂ければ結構です。
そういう意味では、追ってのメールで「不動でも1000円程度支払う」
との内容でご検討をお願いしたいのですが、いかがでしょうか?

これで「受付メールの送信」となりますが。
決して「三顧の礼」を求める決めごとではありません、返答は。

お連絡・ご了解ありがとうございます。
では、お手数ですが腕時計の発送宜しくお願いいたします。
また腕時計が到着致しましたらお連絡入れますね。

現実的には不動では請求する事はありませんが
メルカリ等で、明らかに不動品を買ってキヨセ時計店へ送れば
3.100円も出費するのだから何とか動くようにするだろう!
と、送ってくる方続出したので苦肉の策です。

それでは時計の到着お待ちしております。

キヨセ時計店

これに対してのご理解ある返事ですが。

 お返事ありがとうございます。古いものの修理対応はある意味
クレーム産業っぽくなってしまって大変ですね...

 限られた中でベストを尽くして頂けましたら充分です。

 なお、概ねの納期はいつ頃になりそうでしょうか?清瀬様の仕事
ぶりですと、かなりバックオーダーを抱えておられるのではないかと・・・

このご理解には一安心で感謝です。

最近ではバックオーダーなどという事はあり得ないユックリした状況です。
知人にも言われた事がありますが「申し込もうと思っても”壊れても良いか?”では
申し込みたくても、申し込めないと。」
ましてこの記事の様に「こちらからお断りすることも多々」。
もっともそれは古い時計・高額な時計などリスクが高い時計であって。

普通の5万円くらいの物ならリスクは殆ど無く、受付は可能ですが。
現実は「電池交換は難しいらしい」「壊れる可能性が高いらしい」そう思われているようです。

かといって「どのような時計でもOK」「当店では洗浄までしてピッカピカ!」と
謳って受付が出来るか?という話しです。

それで送って頂き、何か起こっても原状復帰できないとなれば
「そいうご商売をされるのですか?」「顧客の立場に立っておられない」と
責め立てられたとしても何も対応が出来ません。よってお断りする訳ですが。

これでは「受けつける気が無い店」という噂が広がるのは当然でしょう。
しかし部品の調達が難しい物ばかり受けている以上、
ご理解頂ける方のみのサービスとなるのは仕方が無い。
( 「同意確認」これを始めたのは2016年でした。 )
今や「電池交換受付は売上アップを仕掛ける類いのサービスでは無くなりました」。

しかし、今回紹介のお客様のご理解に頭が下がる部分。(下記)

 例えるならば、ひとりひとり異なる人間の、これまたひとりひとり
異なる病状にベストを尽くして臨まれるお医者様のような仕事で
あると思っています。 しかも、良心的な価格でのサービス提供ですね。

これ涙、ちょちょ切れのご意見です。そこまでご理解頂ける事があるだろうか?というレベル。
こういう方ばかりなら。「ドンドン送って下さい!」となり気持ちも前向きになれますが、
現実的には、こういう方は一割も無いでしょう。

説明も無しに受付した場合、事が起こってからご説明しても。

「そいうご商売をされるのですか?」「顧客の立場に立っておられない」と責め立てられても
結果は何も対応出来ません、無責任な結果が待っているので、お断りするしかありません。

※ お医者様のような仕事 ※
それを書けたら分かりやすい例えですが、間違いなく。

たかがサービス業なのに「医者と同等と思い上がった時計屋」となるのがオチで
益々、お客様離れが進むだけでしょう。タイトルではないですが、今日のお話は
もう「電池交換も受付にあたってご理解を頂く時期の限界は越えました」というお話しでした。

この歳になると自分が見えてくる訳ですが、父が商売人だったので
自然に跡を継ぎましたが、金儲けが出来る性格では無かったと、つくづく思うこの頃です。
それは、この歳までやって気付くことであって。若い方は早々に決めつけはいけません。
それでは地に足が付かない人間、人生になりますから。