クロノグラフの「0位置調整」の方法 2004年7月(記述)

0位置合わせは裏蓋を開けて行わない。「針のずれ」は(ボタン操作で合わせます)

クロノグラフの腕時計で「小さい針がずれたので修理」というご依頼があります。

わざわざ預かる程でもない症状でして「0位置合わせ」の操作で直ります。
この0位置合わせを 「裏蓋を開けて時計の内部操作で行うもの」
と勘違いされている方に多いご依頼です。

0位置合わせで「裏蓋を開ける必要性はありません。」
「0位置合わせ=針のずれ修整」ですが、この症状は
プッシュボタンでしか合わすことが出来ません。
そして時計が動いていると言う事は電池はあります。
それでプッシュボタンを押してクロノ針が動かなければ故障です。
その場合は修理は不可ですからメーカーへ送ってください。
時計が動いていない状態、 つまり「電池切れ状態で0位置合わせは出来ません。」
ゼロ位置合わせの前に先ず電池交換が必要ですから、電池交換ついでなら時計屋で。

もしプッシュボタンで0位置合わせが出来ない場合。
それはメーカー修理のみとなります。時計屋では直りません。
メーカーではおそらく要OHとなりますから
タグ・ホイヤーなら5万円くらいは掛かるでしょう。

「下記に”0位置合わせ”の方法を記載しておきます。

簡単に説明すると竜頭を1段引いて(カレンダー修整状態)で、
AかBのボタンを押してみれば何処かの針が動きますから分かります。
次に2段引いて(針回し状態)で同じ操作です。

竜頭位置により各ボタンの修正箇所が変わる。

写真の場合「6時位置の小針=秒針」。
これは秒針ですから何時も動いている針です。
秒針ですから止めるのは竜頭の2段引きか電池切れでないと止まりません。

あとはボタンを押せば所定の位置の針が1目盛ずつ進みます。
長く押せば早送りで針が高速で回ります。

タグ・ホイヤーの場合は押せば「カクン」と感覚が伝わりますが
堅いですからシッカリ押しましょう。
タグ・ホイヤー以外の 2万円までくらいのクロノグラフは
押しても「ムニュ」とした感覚で力は要りません。

私らでも0位置合わせが上手くいかないからといって
裏蓋を開けて点検する事はありません。
全て裏蓋を閉めたままボタン操作でチェック出来るからです。
つまり送って頂かなくてもご自分でチェックや修整は出来るという事になります。

「0位置合わせが出来ない時のチェック方法」

例1

例えば0位置合わせでAボタンをプッシュしても動かない場合ですが、
そういう時は一度竜頭を通常位置に戻します。
そしてAボタンを押してストップウォッチをスタートさせます。

ストップウォッチがスタートしたらAボタンは効いている訳です。
プッシュボタンの動きには問題ありません。
それで0位置合わせが出来ない場合、内部で電気的な機能が壊れております。

次にもう一度Aボタンを押せばストップウォッチが止まります。
そして次にBボタンを押せば全ての針が回り、0位置に戻ります。(0回帰する)
リセット出来たと言うことは、つまりBボタンも効いている。
動きに異常は無い
という事になります。
それで0位置合わせ操作の時のみBボタンが効かない場合は内部で壊れております。

セイコーキャリバー「7T32」ですが普通の0位置合わせタイプ。

これ針がたくさん見えますが左は秒針で下はアラーム時間。
つまりクロノ針はずれた2つしかありません。
クロノ針が2つでボタンは2つですから分かりやすい。

ハイ修整完了。

 

例2

これはタグ・ホイヤーでは無いですが。
どうしても一つの小針が動かない場合があります。
その場合は0位置合わせの各竜頭位置とボタン操作で
「長押しで早送りさせます」すると他の針が連動して動き出す場合もあります。

連動して動くとは、ある針が一周すると横の針が1目盛進むです。
よって0位置まで送るには相当長くボタンを押すことになります。

セイコーキャリバー「V657」ですが、これが連動タイプ。

一番大きな(一番上の針)は秒針です。小さい針3つがクロノグラフ針。
○の箇所の針が1目盛進んでおりますが、これを0位置合わせするためには
先ずは竜頭を2段引きにします。ボタンを長押しして下の□の針を
グルグル回すと1週回って、○の箇所の針が1目盛動きます。
よって0位置まで進めるには逆回転しない以上は相当□の針を
グルグル回す必要があります。

ハイ完了。クロノ針が3つなのにボタンは2つですから
兼用するボタンが必要になる分、操作は複雑になります。

中にはクロノ針2つでボタンは1つと言うパターンも同じです。

タグ・ホイヤーには「クロノ針4つにボタンも4つ」と言う物もあります。

「例3〜8は次のページで」  2017.7.1修正