クロノグラフの「0位置合わせ」の方法/2004年7月(記述)

例3

同じ症状で、やはり各ボタンを押しても一つの針が動かないパターンがあります。
他の針を長押しで早送りしても一つの針が、どうしても動かない場合です。

これは、衝撃が加わって、その針の歯車が欠けて動かない場合です。
そのパターンのチェック方法ですがボタンを長押します。
そしてキズミなどで拡大して見ると、動いていない様に見えた針が
ピクピク〜〜〜と小刻みに震えているのが確認出来れば、このパターンです。

これはメーカー修理しか直す方法はありません。

例4

あとあり得るとすれば「ご自分でムーブメントを取り出してみた場合」です。
戻すときにムーブメント側のボタンレバーと、
ケース側のプッシュボタンの位置がずれていたら当然、操作は出来ません。

裏蓋を開けて左右のずれは簡単に確認出来ますが
上下のズレを無視して裏蓋を閉めてしまう場合です。

例5

これはプッシュボタンが錆び付いて全く動かない場合です。
これは押し込めないので操作は出来ません。
この場合ケースを持ってボタンを机などに押し当ててケースごと下に押さえつける。
または腕時計用ハンマーでコンコンと衝撃を与えて動き出す場合もあります。
(キズは付きますが)
あまり強く叩くと「例3」にしてしまおります(;^_^A

またプッシュボタンを押し込んだまま錆び付いた場合もあります。
その場合はペンチなどで摘んで引いて直る場合もあります。
(希ですが。そして同じくキズは付きます)

基本的には錆び付いた場合「ボタンを抜いて洗浄してグリスアップです」
その作業はこちらに送って頂くしかありません。
問題は錆び付いた場合は大概ボタンのパッキンが劣化しております。
でも交換用パッキンはメーカーでなければ用意できません。
(裏蓋パッキンなどはありますがクロノグラフの場合
径が大きい物は裏蓋パッキンでさえ無い場合があります)

 

例6

もう一つプッシュボタンが動かないパターンがあります。
高額品のクロノグラフに多いですが(それを真似た物にも)
プッシュボタンが”ねじ込み式”になっている物です。
よってボタンに見える物を押さえてもクッションも無く。
上下動をしません。微動だにしない訳です。

この場合プッシュボタンが回せる様にギザギザになっておりますから
直ぐにわかります。
ネジを緩めるとプッシュボタンのクッションが効いているのを
感じればそれで操作が出来ます。

このタイプの物にはプッシュボタンに見えてもボタンでは無く
ネジを回すと下からプッシュボタンが上がってくる構造の物もあります。

プッシュボタンも「ねじ込み竜頭」と同じ構造にして防水性能を
高めている訳ですが、竜頭と同じで閉め忘れたら湿気じゃじゃ漏れです。

これらねじ込みのパターンを錆びたパターンと勘違いして
ハンマーで叩くと大変な事になります。

例7

最後に少ない例ですがフェイク品や雑貨ウォッチに多いですが
「プッシュボタンは飾り」つまりダミーです。
元から操作できない構造と言う事もあり得ます。

例8

これもかなり少ない症例ですが「多軸カレンダー」です。
これをクロノグラフと勘違いする事ですが、
これは竜頭の上下にプッシュボタンがありません。
つまり0位置合わせは不要ですね。

****************************
0位置がずれるのは強い衝撃が加わった時などに多いです。
そして電池交換をすれば高確率で0位置は狂おります。
****************************

「0位置が合った腕時計でも電池交換をすれば80%はずれます。」
これは電池交換をしている方でも知らない人が多いのですが
タグ・ホイヤーなどは電池交換後のリセットがありません。
でも実際には電池を入れ替えた直後、全ての針が自動で回り出します。
(自動でリセットしております)
ただ電池を入れ替えた瞬間は当然、裏蓋は開いており。
文字盤が下を向いておりますから見ることが出来ません。
デジタルならリセットで「12:00」ですが。
アナログですから電子的ではないのでリセットで針がずれる訳です。

この様に電池交換の度に0位置合わせは私たちが行っております。
よって持ち主の皆さんは修整する機会がないのでご存じ無い方が多いのです。
クロノグラフの電池交換を高い値段に設定した店はこういった理由でしょう。
クロノグラフの腕時計をお持ちのあなた。
一度ご自分の腕時計で竜頭を引いて試してみるのも良いです。

ただし私の感想ではクロノグラフの機能を頻繁に使う事は無いだろうと。
それを前提にした耐久性で作られた物が多いです。
(多くはクロノグラフ機能を付けたら格好が良く売れるから)
そのパターンが多いのも事実、頻繁にクロノグラフが必要の方は
「ストップウォッチ専用機種」がお勧めです。
****************************
(実体験ではテーブルに置いてご自身がご不在の時、子供さんが触ってそっと戻して置いた。
それが分からずそして0位置合わせを知らない為に「勝手に針がずれる不良品」とクレームになり
後でご家族の方から連絡を受けて収まった事もありました。
何もしないのに急にずれるというのは考えにくいのです。
ずれても0位置合わせで直る場合が殆どですから0位置合わせを知って居られたら
店まで行く必要も無くご自分で修整して解決した問題でもありました。)

****************************

「こちらでは逆転する0位置合わせ・単独稼働させる0位置合わせ」の紹介です。

さて、ついでですからこの腕時計を使って実際に0位置合わせを行ってみましょう。
(この腕時計の例ですから他の腕時計には当てはまらない操作もあります。)

「長いので続きは次のページでどうぞ。」

腕時計修理の質問集トップに戻る 2017.7.1修正