フェイク品は何故受付して貰えない。

特に自動巻のフェイク品について 2004年7月(記述)

以前にも”雑貨ウォッチが嫌われる理由”を書きました。

大旨の理由は触った場合”壊れやすい”でしたが。
フェイク品はプラス”法に触れたくない”という理由もあります。
「臭い物には蓋をする」という発想もあります。
そのうちのCooの腕時計が蓋されるかもしれません。
冗談はさておき、このフェイク品(パチ・偽物・レプリカ)
色んな呼び方がありますが特にフェイクの自動巻です。

何処の店でも説明無しで”当店では取り扱いできません”となります。
でも説明はしても一言二言では説明がつかないので一言で”扱おりません”。
そうなるのは仕方がない。
そこはCooの腕時計何故そうなるのか解説にチャレンジです。

10年くらい前はMIYOTAの既製品の自動巻ムーブメントなんかがあったりで
ロレックスやミューラーのフェイクに搭載されておりました。
このくらいのムーブメントならまだ何とか修理は出来たのですが、
最近のムーブメントは違おります。
MIYOTAよりも見栄えは良いのですが修理が出来ません。

最近は中国製が多く出回っているようで、良くこれだけの物が作れるなと感心します。

ちゃんとローターも入っていて巻き上げますから機構はちゃんとした自動巻時計です。
ところが材質が脆い。機械時計のムーブメントというのは金属同士の摩擦で動きます。
ある程度摩耗に耐える為にはパーツに硬度が必要になります。

ところが最近の物は金属が柔らかいのが特徴です。
分かりやすくする為に極端な比喩で解説しますと、
例えば国産の自動巻の機械があります。
これと全く同じサイズ形状で柔らかい金属でパーツを作ったとしましょう。
同じ形状ですから組み立てて油さえさせば動きます。

ところが歯車やその軸、また地板までが柔らかい訳です。
正常にショックを与えないで使用すれば精度もそこそこには調整出来ます。

ところが何かショックがあった場合。例えば歯車の軸が歪みます。
歪むと金属同士の摩擦が増えて急に精度が落ちます。
また、これを修理する場合ですが修理ともなれば機械を分解していく訳ですが、

分解の手順で触るパーツがことごとく歪み、キズが付き。
ネジ山が広がってゆく。
となると今度組み立てる時に元の形状からは歪んでおりますから、
本来ならはめ込んで組み立て出来るものが微妙にずれる訳です。
その変形を修正しながら組み立てないといけないので
組み立てに普通の数倍手間が掛かります。

また自動巻ムーブメントには写真の”赤い所”。
これ歯車の軸の先端が摩耗しにくい様にルビーで受けている訳ですが、
まずこういった石は入っておりません。入っているように見えるものもありますが。

また組み立ての歳、ネジを締めて行きますが。
ちょっと力が入り過ぎるとネジがなめてしまおります。
その瞬間ネジが効きませんから部品が固定出来なくなります。
つまり触れば触るほど深みにはまる素材(ムーブメント)なのです。

先日もサイトでロレックスのフェイクですが。
竜頭が外れたので交換の依頼がありました。
竜頭のみと思いましたがネジが緩んで外れたのでは無く、
巻芯の途中で折れておりました。
そこで折れてムーブメントに残った巻芯を取り出す必要がありますが
引き抜くために摘む箇所がありませんから針を外して文字盤も外して行きます。

ところが今、書いた様に外すたびにどんどん部品が変形して行くのです。
結局その腕時計は元の状態にさえ戻せずに返却になりました。
いくらフェイクとはゆえ、こうも脆い素材のムーブメントが出回っているとは・・・

 

まだ購入価格20.000円くらいで買える無名の自動巻の方がマシです。
ロレックスやミューラーなど有名ブランドのフェイクは外見には
コストが掛かってますがムーブメントは低コスト大量生産のムーブメントが入っており。
ハッキリ言って腕時計では無いです。
腕時計のムーブメントの形をした金属の模型くらいの感覚ですか。
雑貨ウォッチを腕時計の職人さんは”腕時計の形をしたオモチャ”と
言おりますが、最近の自動巻も同じ事が言えるでしょう。

こういった所から最近のフェイク品はとても怖くて触れません。
極端ですが修理を預かろうと思えば
「最悪は修理不可でバラバラの状態で返却になっても良いですか?」くらいの感覚です。

よって自動巻のフェイク品は以下の修理項目は不可です。

※ 針や文字盤に触れる修理
※ 時間の遅れ進みなど精度に関する修理、また調整も。
※ ガラス交換

感単に言ってしまえば裏蓋を開けないで出来ることのみ。つ
まりは「受付不可」に等しい訳です。

これも以前にあった話ですが、ガラス交換のご依頼でしたが。
普通の丸いガラスなら既製品で合おります。とお預かり
ムーブメントを取り出し てガラス交換。
ところが出来上がって返送後です。
”送った時よりも誤差が大きくなっておりますが何とかなりませんか?”です。

よってフェイクでも”ある程度の保証期間”はあると思おりますが、
不具合が出れば腕時計ごと交換するしか無いでしょう。
もしその時にムーブメントのみ修理で戻ってくれば、
それは粗悪では無いソコソコのフェイクであったと判断できます。

こういう物が出回ると、おそらく時計屋は全てのフェイクは触らない時が必ずきます。
この私でさえ触るのが嫌いです。
雑貨ウォッチの説明の所で”昔の雑貨ウォッチは実際、故障が多かった”と
書きました。今は雑貨ウォッチのクォーツムーブもレベルが上がって来ました。

自動巻に関しては昔の雑貨ウォッチのクォーツムーブの頃と同じです。
もう20年もして、”世の中が腕時計は自動巻が当たり前の時代”が来たとすれば、
もっと洗練された自動巻ムーブメントが作られるかもしれないです。
”自動巻がブーム”くらいの需要ではまともなムーブメントを作る事は出来ないでしょう。
クォーツは当たり前の時代が来たからこそ
雑貨ウォッチのムーブメントも洗練されたのかもしれないです。

まともな時計屋ならこの記事を読んで。

「ごちゃごちゃ書いても、突っ込まれるだけ損。」
「そんな事を書けば時計好きの理屈好きが、友達作りに集まるだけ」
最初から扱おりませんって言っとけば手間も掛からないのに、お前バカか?」
と言われるのでしょうが。

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