腕時計修理の質問集/腕時計の分解掃除ってどんな事をするのですか?

腕時計の分解掃除・O H(オーバーホールの略)/2004年7月(記述)

腕時計の修理の事を”分解掃除する”と言おります。
または”OH”とも言おります。これオーバーホールと読みます。
「オーエッチ」して下さいなんて言えば笑われます。
以前に「 オー!して下さい」なんて笑えた話もありましたが。

腕時計と言うのは歯車など、回転する部品で構成されております。
丁度、自転車のチェーンを思い浮かべて頂ければ分かり易いですが。
毎日、使っていると油が切れてきたり、錆びたりして来ます。
自転車のチェーンなどは油が切れたら「油を挿す」と言った事をしますが
腕時計はそういう訳には行きません。

何故かと言えば、自転車なら油が切れてもペダルが少し重くなるくらいですが。
腕時計に求められるのは「精度」です。
自転車と違って遅くなっても回転さえすればOKと言った性質ではないのです。

もちろん腕時計内部の部品でも大きな部品(上記写真なら)ゼンマイなどは
回転すれば良く、巻くのが重くなるだけですから油を挿せばOKです。
しかし歯車部分、それと腕時計の心臓部である「テンプ」。
これはコマの様に回転しております。(一方向ではなく往復運動ですが)

この様な小さな部品が正確な速度で回転する為には「注油」のみではなく。
一度時計を「分解」してから油と埃の固まった汚れを綺麗に「掃除」して
新たに綺麗な油を挿して組み立てる作業が必要になる訳です。

よって腕時計に関しては「注油」といった修理はなく。
「分解掃除」(オーバーホール)となる訳です。

腕時計の分解掃除とは
「分解+掃除+注油+組み立て+時間調整」の意味です。

 

機械式腕時計(ZENMAI)時計では「定期的なメンテナンスが必要」と言おりますが、
これは精度を保つためです。
また腕時計内部を掃除して綺麗な油を挿して動かす事によって
「部品の摩耗」 を防ぐと言った意味も大きいです。

腕時計を分解掃除(定期的な)をしないで使っていると部品の摩耗が進んで行きます。
完全に動かなくなってからでは分解掃除はしても部品の摩耗が激しく
「精度」が出ない訳です。よって交換部品も多くなり修理代が高くなります。

よって良く「ちょっと油だけ挿して!」って方が居ますが
腕時計職人さんにそんな事を言えば笑われますね。

「腕時計に水が入った場合」
また腕時計に水が入った場合ですが、これは例え「OH」をした翌日であっても。
また「OH」が必要です。
何故かと言えば、水が入ると言う事は単に「油ぎれ」ではなく。
湿気がプラスされている訳ですから「錆び」が浮いて来る可能性が大になります。

腕時計の部品と言うのは1mmの隙間もなく詰まっており
水が(湿気)が入れば部品同士が水滴で密着した様になります。
よって中々自然には乾燥はしにくい訳です。

湿気が入って「3日」もすれば「錆」が浮いて来ますので、
そうなれば分解掃除も不可能になる場合があります。
湿気が入った場合「約3日以内に腕時計を分解して乾燥」させる事が出来るか?
時計の運命の分かれ道です。

後書き

”自動巻にはメンテナンスが必要”と知って雑貨ウォッチの自動巻を
OHに持ち込まれる事があります。
2万円までで買える自動巻の分解掃除は出来ないと思っておいて下さい。

また仮に分解修理が出来たとしても
手間は同じですから¥10.000は覚悟してください。
そして費用を掛けても毎日使用すれば、精度の維持のみがやっとで
時計の寿命は10年が限界であることも。

ガラスの裏に水滴がついたらそれは「湿気が入っている証拠」ですね。