KING TWINQUARTZ 9723-5010 電池交換メンテナンス
2020.6.20お預かりのKING TWINQUARTZ 9723-5010 電池交換メンテナンスです。
4本届いたうちの1本で他は「TAG HEUER」 「RICHO」 「SEAMASTER」 。
4本の中で「100%動かない」
と感じたのはこの腕時計のみ。
竜頭の動きをチェックして。この辺りに問題は無く普通です。
ステンレス無垢バンドですが薄型のスライドバックルはオールド・クォーツならでは。これは苦労しそうな汚れ具合。
裏蓋は”はめ込みタイプ”で裏蓋記載。
他の3本は古くても洗浄された形跡があり、そこそこ綺麗な状態ですがこれは手強いか?
作業の前に電池を入れて動作確認。不動ですから、そのまま返却です。これ1本のご依頼なら間違いなくそうなります。ところが他の3本は動いた・・・。しかしこの腕時計は裏蓋さえ錆びて開きません。開けようとしてもビクともせず。
苦労してリスクまで負って開けても、不動なら売上にもならず。ただ他の3本分の売上は確保の様なので、頑張ってみますか!
その前に「パルスの発信はあるか?」。不動ながら発信はあり。(最近の時計は不動の場合は発信はありませんが)。
ブレスの外した形跡が無いのと同じで、裏蓋も開けた形跡が無く錆で固着しております。
ここから開けるまで大変ですが30分、頑張って何とか開きました。
開いても動かなければ、全ての苦労は水の泡。
これが取り出した文字盤&ムーブメント。
ケースの内側もチェックしますが、かなりの錆。
パッキンは外すことは可能。ただ加水分解が進んでおり粘着質の状態に。
竜頭を抜くと頭だけがポロリ!なんて危険性もあり。
ところが以外に内部は綺麗な状態で。竜頭の裏側は洗浄でここまでは綺麗に。
竜頭パイプも、ここまでは綺麗になって。
これがムーブメントで。
ムーブメント拡大。ムーブメントは年代ならではの油切れはあるものの綺麗な状態。
裏蓋の裏側もチェックしますが綺麗な状態。
強制運針器に掛けても不動。そこで色々奥の手も行い動き出しました。
さて、このブレス。5回洗浄し直して水洗いし(超音波洗浄機で)コンプレッサーで水分を吹くと、この状態。ブレスの密な構造が良く分かります。同じくお預かりの「オメガ」も同じでしたが。
結局、ここまでの固定を三度繰り返します。
ケースの洗浄は終わってツヤが出ましたね。
裏蓋も洗浄して綺麗になりました。
綺麗になった裏蓋にムーブメントを戻して動作確認。一度、止まりますが強制運針器で動き出します。
外したパーツを戻していきパッキンにシリコン塗布をしてケースに戻します。
綺麗になったケースにムーブメントを戻して電池格納部をチェックします。
電池蓋も洗浄して綺麗になったところで。電池を入れて動作確認。ただ電池蓋の「パッキン装着は不可でした」。よって非防水の状態です。
不動ですから再度、強制運針器に掛けて動かします。
ブレスも洗浄して綺麗になったところで。バックルを装着、オメガ同様爪など全体的に金属疲労が起こっており、可能な範囲で修正します。
時間を合わせて電池交換メンテナンス完了です。問題は翌日も動いているのか?
結局、4本とも翌々日まで動いており発送となりましたが、今回の4本ともに「動いた事が不思議」なくらいの状態でしたが、全て動けば苦労してもやり甲斐があります。
SEIKOの古いクォーツ時計ですから電池交換で動かない場合は「分解修理」となります。
その場合の費用は10.000円〜30.000円くらいの予算をご用意頂かないと
受付さえ出来ません。
また分解修理して動いたとしても、各所の部品の摩耗もあり
その後10年とかの使用には無理があります。
また問題は電子部品の不具合。これは部品ごとの交換しか対応法がありませんが
もう古い部品ですから存在しません。
存在しても、それは何十年も経過した新品です。
よって分解修理で動いても、
その直後に「電子部品の不具合が出た場合は修理の費用が無駄になる」
そのリスクはご了解頂かないと後悔する事になります。
よって古いクォーツは「電池交換で動けば使える時まで使えばOK」と
割り切って使用される事をお勧めします。
「TAG HEUERのページ」では殆どでパッキン交換が行われておりますが。
TAG HEUERのパッキンが劣化している事が多いのでは無く。
「交換用のパッキンが入手出来る」という事です。
更に普通のOリング形状ですから既製品でも合わせる事が可能。
他の電池交換も必ずパッキン交換が必要ですが、入手出来無い為に交換出来ません。
残念ながら殆どの電池交換では元のパッキンを再利用となります。
また「竜頭パッキン」の交換も不可ですから防水機能にはご注意ください。