腕から外すと遅れるクォーツ(止まる)

電池交換したが腕から外すと止まる/2004年7月(記述)

表題の症状ですが私の経験から。”今年も、そのシーズンがやって来たか”。
といった感覚です。
(必ずしも写真のムーブに限定するといった意味ではありません。
ムーブのイメージとお考えください)

特に薄型のクォーツでは経年劣化すると多い症状です
毎年、寒くなってくるとシーズン中に10人はこの症状で来店されます。
中には”電池交換してまだ数ヶ月なのに”とクレームになることも多々。

今年は、まだ11月なのに、この症状で最早2人目の方がこられました。
”電池交換の保証中”という事ですが基本的に電池交換の保証はありません。
何故かと言えばこの症状、開けて電池を測っても1.55V正常値の電圧があります。
そして念の為に新品の電池に入れ替えても症状は改善されません。

電池交換後、数ヶ月〜1年はちゃんと動いていたのに”寒くなると遅れる”。
または止まる訳です。
私の経験から最近の国内メーカーの腕時計では、まず見かけなくなった症状です。
まだSWISS MOVE では、この時期になると多い様です。

これは経験から一番上の写真のムーブメントですが
青い部分が見えるのが特徴のスイスムーブ”でよく起こります
。皆さんは裏蓋を開けてムーブメントを見る事は出来ませんが、
このサイトの「電池交換コーナー/ブランド腕時計」を見て頂ければ分かりやすい。
購入後7年以降くらいから、この症状が出てる様です
”ムーブの油ぎれが原因”です。
SWISSムーブはデリケートですから、油の汚れや硬化で寒さのダメージを受けます。
腕に着けている間は腕時計が体温でぬくもっておりますから、油も固くならない訳です。

つまり”腕時計は体温の36.5°環境下で使用される事を前提で設計されおります。

症状の改善には分解掃除(オーバーホール)しか、ありません
費用はブランド腕時計で¥30.000〜¥50.000くらいでしょうか。

一番多い問い合わせ方が”腕に着けている間は正確で、腕から外すと遅れる”です。
油切れの状況にもよりますが、こういった場合。
腕時計を外した後、普通は机などの上に置きますが、
これをハンカチかタオルで包んで一晩置いてみてください。
意外にこれで夜中の間に止まったりすることを防ぐことが出来ます。
プチプチで包むのも効果的です。
根本的にはOHが改善する方法ですが。

また、こういった症状を訴える方の腕時計は皆、綺麗な状態の腕時計が多いです。
つまり、あまり使用されていない時計です。
「外出用」とされるが為に、腕時計内部の低温状態が長く続いた結果です。

それと最初にも書いた”薄型クォーツ”です。
薄型クォーツは、外部の影響を受けやすいですが構造上しかたがない。
分厚い腕時計ならケースの厚みや頑丈さで外界の影響は受けにくい訳です。
ロンジン・オメガの薄型クォーツをお使いの方、
朝起きて腕時計が遅れていたら分解掃除の時期がきております。

クォーツは寒さに弱い?」も参考に。腕時計修理の質問集トップに戻る2017.7.11修正